「茶仏―お茶と寺廟のある風景」読んだよ~
お茶はお寺と密接な関係がある。
お茶は仏教とともに中国からアジア各国に広まった。
そんなお茶とお寺をめぐる旅の本。
まず、タイトルを不思議に思う方もおられるかもしれません。
なぜお茶と仏なんだと。お茶と寺なんだと。
お茶は中国から伝えられたものだということを知っている人は多いと思いますが、
古くは最澄・空海・永忠・・・遣唐使とともに、唐へ渡った僧たちが持ち帰ってきたのが最初です。
それ以降も、栄西・隠元・明恵などなど・・・キーマンとして名僧たちが挙げられます。
喫茶法、お茶の栽培など、お茶の発展は仏教とセットみたいなとこがあるんだそうです。
それは元祖の中国でも同様で、
古来、
「名山出名寺(名山に名寺あり)」
「名山出名茶(名山に名茶あり)」
「名寺出名茶(名寺に名茶あり)」
とされ、やっぱり寺とお茶は密接。

この本では、まず日本から旅していきます。
京都はもちろんのこと、長崎も出てきます。また行きたい場所が増えちゃう(笑)
読んで初めて、最澄が中国浙江省天台山から持ち帰ったお茶のタネの末裔たちが、大津・坂本駅のそばにある「日吉茶園」っていう所で育てられているってことを知りました。以前わたしは旅行で絶対その前を通っているはずなんですよね、スルーしてたってことですよ。やっぱりモノを知らないって損だわぁ・・・。お土産に買えたかもしれないのにね。
それから韓国。正直現代ではあまり仏教の国というイメージではないけれど、智異山など茶園を持つ寺などがある。やはりこの国も中国から仏教とともにお茶の文化も入ってきたようで、茶室のあるお寺は、かつては文人たちのサロンのような役割も果たしていたみたい。
で、なんといっても中国。ページ数も一番多い。
各地の名山名寺に有名な茶葉があり茶園がある。
浙江省の天台山には「華頂雲霧」、
長興顧渚山には「顧渚紫筍」、普陀山には「普陀仏茶」
安徽省 黄山には「黄山毛峰」
四川省 峨眉山には「峨眉竹葉青」「峨眉毛峰」
福建省 武夷山には「武夷岩茶 大紅袍」「鉄羅漢」
江西省 廬山には「廬山雲霧」
などなど。(これらは本で紹介された茶葉の一部です)

ほかにも「茶外茶」といって茶葉ではない素材のお茶も。
(トウモロコシ茶やハト麦茶などは茶外茶)
そしてお茶の数だけストーリーがあって、
茶樹の逸話、現地の伝説、名水、そのお茶を愛した皇帝や歴史上の人物の話・・・
お茶だけでこの厚み。さすがと言わざるを得ない。
それに、お茶からその国の仏教の伝播の歴史や、寺のありようなどが知れて良い。
お茶発祥と言われる南部の雲南省・四川省・貴州省あたりにくると、
まだ古代の名残を残したような喫茶法に出会う。(特に少数民族)
まるで時代をさかのぼっているような感覚になって面白い。
お茶と合わせる素材にショウガ・ニンニク・蜂蜜・バター・ごま油etc・・・が出てきて、まるで料理。いや栄養ドリンクか。お茶は古くは薬扱いだったというし、栄養ドリンク的な位置づけで考えるほうが合ってるのかもしれない。
さらに、チベット自治区やウイグル自治区、ミャンマー、
果ては中央アジア(キルギス ウズベキスタン トルクメニスタン)、
イラン、トルコまで。お茶とお茶文化の探求の旅は続いてく。
著者の情熱には本当に脱帽~。

ほっとひと息つくお茶の時間、みんな心の鎧を脱ぐ。
だからお茶を巡る旅では普段着の人々の姿が見られるんだよね。
そんな各国の人々の等身大の生活ぶりや穏やかな日常が、読んでいるこっちにも伝わってきて、とても心地の良い読書タイムでした。
それと「茶道」のような、いわゆる「お作法」についてはあまり取り上げてなくて、素材の茶葉そのものや、どのような方法で茶を味わっているのかといった興味で旅をされているところも個人的に好みでした。
巻末に訪れた場所を示した地図と、紹介されたすべての茶葉が載っていて(特に茶葉はカラー写真付き)、非常に親切。分かりやすかった。
今回はトルコまでだったけど、まだまだ旅は続きそう。
続編出るならまた読みたいです。

