「神の木―いける・たずねる」読んだよ~
ご神木についての本。
各地のご神木を紹介するような写真集的な本じゃなくて、
華道家の先生と、
国文学者の先生が出した本だというところがミソだと思います。
正直、大きな樹木って長い歳月を生きてきた風格を醸し出しているから、
それだけで疑問にも思わずご神木として受け入れてきたけど、
「なぜその木がご神木とされたのか」
とか
「ご神木とされたのは、なぜその種類の木なのか」
といったことまで考えたことがなかった。
この本にはよくご神木や神事などに使われる
椿、樟、槙、杉、梶、桂、檜、柞(いすのき)、松、白膠木(ぬるで)、柳、欅
これら12種類の木について取り上げてます。
著者のひとり、国文学者の光田先生による樹木についての蘊蓄がとても面白くて、目からうろこでした。
たとえば、樟脳。
おなじみの樟(くすのき)のもっている虫除けの効果が、昔の人々にとってはその木の霊能と受け止められていたのではないかとか。防虫剤も何もない時代、これはちょっと納得しちゃうかも。
木の持つ力に感謝してその特性を活かしきる。
そんな昔の人たちの自然に対する謙虚な態度も感じる。
知らず知らず自然に対するリスペクトを忘れてしまってる、現代人な自分をちょっと恥じました。
あるいは柳。
現在、日本の小京都といわれるような古い町並みが残る場所には、たいてい生えている柳の木ですが、実は中国原産で、中国の南方、長江あたりからやってきた木だということは樹木に興味のある人しか知らないのでは。まして柳には雄・雌の木があって、日本にある柳はすべて雄オンリーだなんて、この本を読まなかったら知らなかった。
そのうえ、同じく中国原産で日本に入ってきた金木犀や沈丁花も、日本に入ってきたのは雄の木だけらしい。雄の木のほうが生育が早くて樹勢が衰えないそうですが、これだけきっちり雄だけが何故?・・・って理由は、実は不明なんだとか。
また、印象に残ったのは高野槇を扱った章の一文。
「一族はかつて世界に広く分布して大いに栄え、倒木が石炭をなすほどであるが、次々に滅んで今では高野槙ひとり、それも日本という洋上の島にしか残っていない。生きている化石なのである」(本文から引用)
なんだか素敵な表現ではありませんか。
高野槇の貴重さがよくわかるし。
そのうえ、これを読んでるわたしは、この高野槇が秋篠宮家の悠仁親王のお印であることを知ってる。なにやら高野槇とリンクして日本の独特さを改めて思いましたね。
そして各章のシメとして、
その樹木をいけたもう一人の著者・川瀬敏郎先生の作品の写真が出てきます。
樹木の歴史を語った光田先生とは対照的に、こちらはあくまでも「今」。
目の前の木と一対一で向き合い感じたことや、それが作品にどう繋がったかが書き添えられています。
文章は短くまとまっていて読みやすいですし、本そのものは薄いんですが内容は思いがけず濃くて良かったです。
今まで、植物についての本は何冊か読みましたが、こういうアプローチの本は初めてだったし、類似の本はなかなか無いんじゃないかな~と思う。
以上、「神の木―いける・たずねる」読書感想でした♪


光田先生の芭蕉についての本もちょっと面白そうなんだよね~